読んでわからないものは聞いてもわからない。

CNN Headline News 撮影 浅井岳史 さて、私たち日本人にとって最もやっかいなものはおそらくリスニングでしょう。しかし、これは英語を使う上で最も重要なものなので絶対に克服したいものです。巷にはたくさんの教材があり、またたくさんの人がビデオやケーブルテレビでCNNを見たりして少しでも聞き取れるようになろうと努力しているようですが、私はここで大前提を確認したいと思います。読んでわからないものは聞いてもわからない。そうです。耳で聞くことと目で読むことは脳の中では同じプロセスなのです。コンピュータで例えるとワープロで作った文章を、ディスケットでもらうかメールで送ってもらうかの違いみたいなもので、結局同じ脳で文章を解読します。

最近は、洋画を見ているとキャプションといって英語が字幕のように表示される機能のあるテレビが出回ってきましたが、機会があれば一度試してみてください。俳優がしゃべっているのと同じ速度でキャプションが読めますでしょうか。もし、しゃべっている速度に読む速度が追いつけないのであれば、それはリスニングができないのではなく、読解力がないからリスニングができないのです。その場合はリスニングをいくらがんばっても絶対に聞けるようにはなりません。ピアノでゆっくり弾けない曲をいくら早く弾こうと練習しても決して早くは弾けません。もし早く弾きたいのであれば、先生はスローテンポで練習して弾けるようになったら少しずつメトロノームを早くしていきなさいというでしょう。

リスニングができるためには速読ができていなければいけません。速読ができるためには精読ができていなければいけません。精読ができるためには文法を完全に理解していなければなりません。文法を理解するためには、高校生の文法書を完璧に学習しなければいけません。そうです。前に述べたように高校生の文法がすべての基礎でそれを怠ってはどんな努力もすべて無駄になることを理解してください。固まっていないコンクリートの基礎にいくら柱を立てても家は建ちません。

では文法も理解し新聞も何とか読めるという人はどんなリスニングを教材にすればよいのでしょうか。私は洋画のビデオが一番良いと思います。一つのビデオを繰り返し繰り返しみるのです。なるべく現代のアメリカで、自分の学習したい内容に近い環境(たとえばイギリス映画やシェークスピアは適さない)で何回も見たくなるようなビデオを決めてそれを一日15分でいいから毎日みることです。しばらくはなんの役にもたちそうに無いのですがそのうちに脳が覚え始めて、あるとき自分でもびっくりするくらい英語を拾ってくれています。もちろん台本やキャプションに書いてある台詞が読んで理解できるということが大前提です。

まだ新聞を読むのは難しいというレベルの方には、私は迷わずNHKのラジオ英語講座をすすめます。ビデオにしてもラジオにしても本当に役に立つ英語教材というのはお金がかからないものなのです。